【前回の記事を読む】俺が逮捕されるよう仕向けていたのは、結婚を考えていた彼女だった。…彼女は、虚偽の被害届を出していたのだ。

スクリーン ~永遠の序幕~

ただいま

「ああ、いろいろ分からないことだらけだよ」

俺はため息交じりにうつむく。

「びっくりしたぞ、突然逮捕されるなんて。まあ、お前が殺人なんてできるとは思ってなかったけどな」

からかうような慰め方だ。

「ああ」

どうも調子が出ない。やっぱり殺人容疑で逮捕されたことは知られている。学校の皆もどこまで知っているのだろう。いつも通り接してくれる友人がいることは嬉しいが、くつろげない。

あれだけ留置所にいたにもかかわらず実感は薄い。この先の不安だけでなく、事の重大さがそうさせるのだろう。俺と亮は二人で無言なことはよくあった。しかし、今は亮が俺のことをどう思っているのか気になり、まともに顔を見ることすらできない。

「お前、うまいもの食べてなかっただろ?」

亮は急に部屋の外へ行きロールケーキを持ってきた。

「ありがとう」

亮の優しさを噛(か)みしめるように口にした。

「うまい」

漏れた声に恥ずかしくなる。さりげなく顔をあげるだけで精一杯だ。

「親父さん、お袋さんには会ったのか」

亮は俺を気遣っているのか、こちらを見ず、手元の雑誌を見ている。

「いや、まだ」

「なんでだよ。普通最初に家に帰るだろ。どうして俺のとこに来るんだよ」

亮の言うことはもっともだ。だが、家にどんな顔して帰ればいいのか分からない。

「仕方ないな。行くぞ」

亮は雑誌を閉じる。俺の気持ちが伝わっているようで頼もしい。

「なんだか帰りたくないな」

また心の声が漏れる。