【前回の記事を読む】「養成所に行って芸人を目指した友人がいたけど、卒業してから音信不通。だって…」彼は高校の同級生を社会的に見下していて…

第2章

「ここにいるお前らには、僕の友達みたいになって欲しくないんだ。大切な後輩だから。一緒に社会に出て頑張りたいんですよ! 一緒にポジティブマインドで頑張りましょう! やりましょうよ! やりましょう! お前らならできる! 絶対、俺みたいになれるから!」

彼は自分の成功体験を僕らに押し付けた。唾液が滴り落ちそうになるほど、饒舌に上下運動する安っぽい肉の塊を僕はただただ憎々しく思えた。進路であれ学問であれ、ひとたび人間に何かを教育しようとするとき、どうしてヒトは個人の主観に頼ってしまうのであろうか。

それは一般化することができない一つの事象に過ぎないのかもしれないのに、何故ヒトはその成功体験に依存するのであろうか。

僕が欲していたのは、誰かの成功体験や主観に基づく逸話などではなく、個人の体験を大量に観察することによって導き出される法則や科学的根拠に基づいた将来の道標である。同じ高校を卒業し、大企業に入った男とお笑い芸人を目指した男の格差。その差は人生の幸福という点において、統計的に有意であることを僕に示して欲しい。

貴様の感情論などは御免なのであり、貴様の御目出度い主張には徹頭徹尾反対なのである。不毛な講演が終わり、OBの彼を現世に降臨した神が如く崇めて群がり、おもねる凡人生徒の群れ。

そんな奴らをかき分けて反駁するのも馬鹿らしいと考えた僕はそそくさと体育館を出た。