そこに、「駿ちゃん、お疲れ」と話しかけてきたのは、クラスメイトのマコトだ。

「講演、長かったなぁ。ダルかったわぁ」と周囲に聞こえるくらいの大きな声で欠伸をしながら言い放つ彼。近くに進路指導の教師もいたので、僕は少し肝を冷やした。

彼の性格は、一言で良く言えば天真爛漫。一言で悪く言えばガサツ。

この世に生まれる時に、遠慮や気兼ねという人間として大切なものを母親の子宮に忘却してきたのだろう。思いついたことは何でも口にしてしまう。どちらかというと繊細な性格の僕にとっては、一緒にいて丁度バランスがよかったから、彼とは仲良くしていた。

「ほんま、それ。きつかったよなぁ」

「しんどいわぁ」

「マコトはさ、卒業したら進学なん? 就職なん?」

「うーん、まだわからん。家業の工務店を継ぐ感じにはなると思うねんけどな。大学行って遊びたい気もするしなぁ」

「大会社の社長の息子は、呑気でええなぁ」

「アホ! どこが大会社やねん」

「え? 大会社ちゃうかったっけ? 従業員、何人雇ってるんやったっけ?」

「従業員は総勢、一人や。しかも、オカン」

「家内工業やないかい!」

いつもの予定された掛け合いをして、僕らは二人で笑った。笑いながら歩いていた僕らの傍をくすんだピンク色の自転車が通り過ぎた。僕らは立ち止まった。

自転車を立ち漕ぎしているのはクラスメイトの小林。馬鹿でかい図体を右へ左へ揺らして、フンガフンガ言いながらハンドルを操縦している。その荷台に、ちょこんと二人乗りしているのは、同じくクラスメイトの坊主頭のタケ。

小林が息を切らせながら「駿、先に行っとくで〜」と言い、「ガストで待ってるで、ガストやでぇ」とタケが付け加えた。マコトが「すぐ追っかけるわ!」と返し、僕は手を振って了解を伝えた。マコトが続けて「タケのにけつの仕方、完全に女子やな。あいつらデキてんちゃうか」と言って笑い飛ばした。

次回更新は3月16日(月)、14時の予定です。

 

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