パンドラの箱が開いた

強い恐怖を感じながらも、あたしは言った。

「あたしトイレに行きたいの。それに家に帰りたいわ」

男はあたしの頬を一発張った。

「逃げられると思うんじゃない。おまえにはいろいろ役に立ってもらわなきゃなんねえんだ」

男は手にナイフを持っている。それでもあたしは怯まなかった。

「トイレに行かせてくれないと、家の中を汚して、ほかの人の迷惑になるわ」

「うるせえ!」

男は声を張り上げ、あたしの髪を引っ張った。あたしは男をにらみつけた。それでも失禁されるのが、嫌だったのだろう。あたしをトイレに連れていった。

いかにも薄汚れた蓋のない洋式トイレで、用を足しながら目に入るものをすべて観察した。

「おい、遅いぞ。早く出ろ」

あたしが渋々出ると、さっきより機嫌が悪くなった男に、後ろ手にきつく縛られた。なにか言って、ますます機嫌を損ねられたらまずいので、いったん黙った。

またさっきの小部屋に連れていかれた。ようやく、この家の様子がわかってきた。男は少なくとも、二人以上はいるようだ。

あと女性は、あたしを入れても四人以上はいるのだろうと、想像できた。トイレから小部屋に戻されたとき、反対側に行けば玄関なのだろうと思った。

二階があるのかどうかは、この時点ではわからなかったが、この家はあまり大きくない戸建てだ。西日が当たっているところを見ると、角地なのだろう。

できる限りの情報を、頭に入れた。突き飛ばされるように、部屋に押し込まれた。ドアがキーッと音を立てて軋んだ。