一見、気難しそうな男性も、何度も何度も足を運ぶことで、私を信用するようになった。私の場合、詐欺といってもお金の対価の労働もしたのだから、そんなに悪いことをしたという感覚は正直に言って持っていなかった。木村さんに対しても、おばあちゃんがあまりにも私を可愛がってくれて、お金が足りないと言うと、一生懸命工面してくれたので、感覚が麻痺して調子に乗りすぎたのだ。刑務所に収監された私のために、嘆願書を書いて…
[連載]泥の中で咲け[文庫改訂版]
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【最終回】松谷 美善
木村のおばあさんから三千万円を騙し取った。それなのに、捕まった私の罪が軽くなるようにと嘆願書を書いてくれて…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第21回】松谷 美善
年寄りの寂しさにつけ入るのは、とてもたやすい作業だった。彼らが喜びそうなことを言うと、面白いように高齢者は私に騙された
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第20回】松谷 美善
16歳の夏、母が脳梗塞で突然死んだ。未成年のうちから、両親がいなくなり路頭に迷ってしまった。なぜこうなってしまったのだろう…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第19回】松谷 美善
「至急、入院の準備をしてこちらの病院へ行ってください」と言われ、頭が真っ白になった!
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第18回】松谷 美善
若い男に三千万円を騙し取られ、ぼけたと思われた私は施設に入れられた。何か月も経ったが、誰一人面会に来ることはなく…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第17回】松谷 美善
「奥さん、この二年あまりで三千万円近くになりますよ。こんなになるまで気がつかなかったんですか?」と警官に呆れられたが…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第16回】松谷 美善
いつの間にか異性に対する感情になっていた彼から「今月、あと二十万あれば、僕ノルマクリアなんです」とお金を無心され…。
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第15回】松谷 美善
「よかったら、お手伝いしますよ」と突然訪れた好青年。タダほど高いものはない。私はこのあと、身に染みて思い知ることになる…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第14回】松谷 美善
後輩より給料が2万円低かったことを知ってショック…。腹を立てて転職した先は、なんと「詐欺会社」だった
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第13回】松谷 美善
ある朝、僕の日常は一変する。工場に出勤したときに大騒ぎになっていた。あるトラブルの原因を僕のせいにされ…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第12回】松谷 美善
監禁されているここから絶対に生きて帰りたい…。ある明け方、今だ!と直感し、そっと音を立てないように、立ち上がったところ…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第11回】松谷 美善
マッチングアプリで出会った男に騙され監禁。そこには複数の女性がいて、上の階からは「お願い、殺さないで」と懇願する声が…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第10回】松谷 美善
マッチングアプリで出会った男性と夜の11時に待ち合わせ。渡された紙コップを一気に飲み干してしまったところ、記憶がなくなり…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第9回】松谷 美善
16才で母を亡くした。一人で生きていくために頼った見ず知らずの相手はヤバい連中だった。連れて行かれた先で見たものとは…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第8回】松谷 美善
「キミ明日から来なくていいから」と突然の解雇。アパートの管理人からは「三日以内に次の部屋を探して、出て行ってくれ」と言われ…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第7回】松谷 美善
母さんが死んで、一人で生きていかなければならなくなった。高校中退後、月6万円での生活。お墓も作れず母さんの骨と一緒に暮らした
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第6回】松谷 美善
母さんが死んだ。葬式はできず、骨壺に入れられて戻ってきた母。父からは「かかったお金はお前が働いて返せ」と請求書を渡され…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第5回】松谷 美善
もう、手の施しようがないと言われた母。離婚した父を頼ったが、面倒臭そうな反応をされ…。そしてたった四日で母さんは死んだ
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第4回】松谷 美善
ある日突然「お母さんが職場で倒れて救急搬送され、命の危険もある」と電話がかかってきて…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第3回】松谷 美善
修学旅行欠席で返してもらったお金は八万円。その内半分程度である物を買ってもらい…
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