よかったら、お手伝いしますよ
なんとなく予感がしていたので、言われたことには驚かなかった。
家の中に入って、彼に直してもらった箇所、さまざまなことを手伝ってもらって、いくら支払ったか、細部に至るまで尋ねられた。
最後のほうは警官はあきれ顔で、それでも内訳を聞き取った。
「奥さん、この二年あまりで三千万円近くになりますよ。こんなになるまで気がつかなかったんですか?」
私は知っていたけど、認めるのが怖かった。彼に会えなくなるのが、なによりも嫌だった。
うまく説明できないけど、この二年間幸せだった。そう思っても、とてもそうは言えなかった。
間もなく、警察から連絡を受けた息子が、慌てた様子でやってきた。そして激しく私を責め立てた。私のことが心配だったわけではなく、結果として盗られた三千万円が許せなかったのだ。
「お袋、ぼけたのか? まったく、こんな金額を騙し取られるなんて信じられない。そんなにぼけているんだったら、施設に入れるよ」
息子がこれほど強く私を責めたことはないので、反発しても無駄だと思って黙っていた。
私は坂本に騙されたことより、彼の余罪があまりにたくさんあって驚いた。二十四歳頃から彼は、二百人以上の高齢者を騙していたと聞かされた。
その被害が明るみに出なかったのは、高齢者が騙されたのを恥ずべきことと、黙ってしまっただけではない。
坂本のことを可愛いと思ったからだと思う。