一粒の種子たね

地方都市の公立の小中学校の教師は、みんなの前であからさまに、生徒の家の事情をポロっと口に出し、下手すると給食費を払っていないことまで平気でバラして、自分が生徒の気持ちを傷つけたことにも気づかない、自覚のない人ばかりだ。

下手な自己主張はいじめの始まりと、もっと小さなときから俺は体でわかっていた。これは母さんがうちで言っていたことの受け売りも入っているが、俺もほとんど同意見だ。

だからうちの教育方針は、勉強でも課外授業でも「とにかく目立つな」だった。事実、俺の少ない人生経験のなかで、目立ってしまったがゆえの、いじめやからかいをたくさん見てきた。

狭い町内、人の口に戸は立てられない。母さんは俺が生まれてからすぐ働いている。お店も同じ町内だったので、母さんがつい言ってしまった俺のテストの点数を、次の日には町内みんなが知っていた。

よい噂より悪い噂のほうが、尾ひれがついておもしろおかしく伝わるのは、「勘弁してくれ」だった。

ひたすら目立たないように気配を消しているのが俺のキャラクターで、決しておとなしいわけではないと思っていた。

小中学校の俺の狭い世界で、だいたいどこから学校に通っているかで、ふだん誰と群れているかが決まっていた。

群れるということが、友達がたくさんいるということと、イコールではない。

ずっと母さんは言っていた。

「困っても誰も助けてくれないよ」