この言葉だけは俺の根っこにあったので、あくまで目立たないように振る舞っていた。
俺は孤独が好きなのではない。
できれば親友がほしいと思っている。
まだ幼稚だった俺は、異性のことを考えたこともなかったが、そろそろまわりのクラスメートのなかのマセた連中が、愛だ、恋だ、と騒いでいた。授業についていけているわけではないが、給食食べたさに学校は皆勤だった。
なんとなく、ただなんとなく、月日は過ぎていった。
俺はなんの目的もないまま、母さんに「中卒じゃ、今どき就職先もない」と、半ば押し切られたかたちで地元の高校に進学した。
たまたま試験を受けたら、受かってしまったから、というのが正しいと思う。
進学して間もなく、俺はひきこもりになった。
ひたすら、母さんが仕事に行くまで狸寝入りをしていて、部屋が留守になるとノソノソ起き出して、テレビを観るかゲームをする、怠惰な日々を過ごした。
母さんは、こうなった当初は文句も泣きごとも言ったけど、なによりも仕事が好きだったのだろう。そのうち、なにも言われなくなった。
母さんになにも言われなくなって、俺の生活態度が許されたような気がしたのは、あくまでもその当時の短絡的な考えだった。
そしてある日、俺のパラダイス的生活も、終わりを迎えるのだ。
それはすでに暑くなりはじめた七月初旬のことだった。いつものように寝ぼけまなこでゲームのレバーを握っているとき、突然けたたましく固定電話が鳴った。