【前回の記事を読む】上京してきた母が、都内の病院に緊急搬送…「気分は良い」と言いながら、モニターの数値は明らかに悪くなっていき…
サイコ4――人体発火
5月1日、警視庁捜査一課に都内連続放火事件の特別捜査本部が設置され、今日も捜査会議が開かれていた。一課長の土屋がスライドを用いて事件の概要を説明していた。
「最初の事件は4月4日深夜零時頃、新宿区の多田淳さん40歳男性のマンションの14階で発生した。
上の階の住民の話によると、深夜に煙の臭いがして、その後に火災報知器が作動。スプリンクラーが作動したので非常階段で避難したそうだ。しかし、当の多田さんは避難しておらず、消防が消火に当たったものの、その後部屋は全焼。
鎮火した後に調査したところ、寝室で炭化した遺体が発見された。状況から、この遺体が多田さんであると思われる。
言うまでもないと思うが、この多田さんは前衆議院議員で、当時、防衛大臣補佐官を務めていた。多田さんには妻と娘がいるが、この部屋は防衛省に近いため仕事用に一人で使っていた。
問題は火災原因調査報告書だ。出火箇所の調査の結果、火元は多田さん本人であると判定された」
会議室がざわついたため、土屋が「静粛に」と注意した。
「しかし、消防及び科捜研の調査でも遺体及び室内からガソリンなどの燃焼促進剤は全く検出されなかった。
それと、通常の火災では炭化した遺体であっても、内臓に焼損は見られないことが多いが、多田さんの遺体は内臓はおろか、骨に至るまで完全に炭化しており、火葬と同じ、つまり、800から1000度で1時間程加熱された状態だったということだ。
運び出すときに体がぼろぼろに崩れてしまって、原形を留めなかったらしい。DNA鑑定も不可能だった。
通常の火災でここまで高温が長時間維持されることはない。つまり、多田さんがどうやって発火したのか、全く謎だということだ」
再び会議室が騒がしくなった。その時、鍬下が手を挙げた。
「これが放火だという証拠があるんですか?」
「ない。マンションの防犯カメラをエレベーターも含め確認したが、当日その階に怪しい人物の出入りはなかった。スマホとPCも焼損してデータも復元できなかった」
「それなのに何故放火だと?」