だいたい、いつまで家族三人が同じ屋根の下に一緒に住んでいたか覚えていない。父さんの姿は輪郭だけしか思い出せなくて、いつも西日だけしか当たらない、夏は地獄のように暑い台所で、機嫌が悪くしゃべらない父の背中が見えたところで記憶が止まる。今年は運がよく、連休の前日に俺が熱を出した。なぜ運がよいのかというと、家事を言いつけられないで済むからだ。母さんは看病してくれるわけでもなく、いつもどおり仕事に行った…
[連載]泥の中で咲け[文庫改訂版]
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第2回】松谷 美善
うんていから落ちて救急車で運ばれ目が覚めると不機嫌な母の顔があり…
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【新連載】松谷 美善
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【最終回】松谷 美善
【小説】「まだ人生の三分の一」更生を心に誓う男の切実な思い
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第5回】松谷 美善
詐欺をはたらき続けた人物が「人生は些細なことで大きく変わる」と語るワケ
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第4回】松谷 美善
「なぜこうなってしまったのだろう」猛熱の最中、つらい過去がのしかかる
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第3回】松谷 美善
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第2回】松谷 美善
「認知症になってしまいたい…」受け入れがたい、みじめすぎる現実
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小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【新連載】松谷 美善
「あと20万円あればノルマクリアなんです」…奥さん、驚愕の被害額
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