夢の記憶
迎えにきた、民間の救急車の運転手に問われたことにも曖昧に返事しているうちに、私はうとうとしてしまったようだ。
病院に着いて車が裏門のようなところを入って、起こされた。緊張から、よけい熱が上がった状態で、私は言われるままに車を降り、指定された通用口から病院に入った。
待っていたのは驚くほどの量の書類だった。
入院の証書と事前の問診票、さらにこの病院の規則と説明、これだけでざっと四十ページ以上はあった。
(こんなとき、頼りになる家族がいれば、雑務全部を引き受けてくれるのに)
思ったところで、私には家族はいない。朦朧とする意識を無理やり保ち、どうにか証書と問診票を書き上げた。なんとか我慢して、三十分ほど過ぎたとき、看護師らしい人が入ってきた。
そのとき気づいたのだが、この建物はあとから付け足されたものらしい。細長い部屋が細かいブースのように仕切られていて、ほかの部屋にも人間の気配がした。
これで終わりかと思ったら、それから延々と一時間以上、採血採尿、既往症の有無など、診察は続いた。すでに時間は午後三時を過ぎていたが、朝からなにも食べていなかったので、気が遠くなり、倒れるかと思った。