パンドラの箱が開いた
あたしは液体を飲まされて、しばしば気を失った。そのうちに感覚が麻痺して、今が何日なのか、そして昼夜何時頃なのかもわからなくなっていた。
でも、こちらが冷静でさえいれば、必ずチャンスはくる。そして、それはそんなに間を置かずにやってきた。
朝、まだ暗い時間、珍しく家が静かだった。
男のうち二人は夕べ帰ってきていないようだった。二階に多分二、三人、誰もが眠っているのか物音はしなかった。ちょうど、昨夜トイレに行ったタイミングで、拘束も解かれていた。
あたしは今だと、直感した。
今を逃したら、逃げることはできないかもしれない。そっと音を立てないように、立ち上がった。息を殺して、玄関まで来た。
玄関横に誰か寝ている。万事休すかと思った。
あたしが音を立てないように玄関の扉を開けると、その若い男も一緒に飛び出てきた。とっさに捕まると覚悟したが、そうではなかった。
「走れ!」
若い男が言った。
二人とも無我夢中で走った。七、八分で大きな通りに出た。あたしは交番の表示を見つけると、迷わずに行こうとした。
若い男に制止されて、ふと足もとを見ると二人とも裸足だった。でも、ここで迷っていたら、また捕まってしまうかもしれない。構わずに交番に入った。若い男も付いてきた。