すぐに男が戻ってきて、紙コップに入った液体を飲むように言われた。いったん拒否したが、縛られた腕をひねるように上げられて、
「腕の一本ぐらい折ってやっても、いいんだよ」と凄まれた。
そのあいだにも、隣の部屋で女性の悲鳴が聞こえる。
上の階らしきところからも、
「お願い、殺さないで」
と女性の懇願する声。それに対して、
「うるせえ! 言うことを聞かないと殺すぞ!」
また別の怒鳴り声も聞こえてくる。
この家には一体何人の男女がいるんだろうかと、恐ろしくなった。
あたしは思考を止めるように、差し出された液体を飲んだ。
また記憶が飛んだ。
女性のすすり泣く声で目が覚めた。一日に与えられる食事は、コンビニのおにぎり一個かパン一個のみだった。
あたしには、このへんから絶対にここから生きて出てやろうという、強い決心が芽生えていた。
女性たちは失禁しそうになると、トイレに連れていってもらえるようだった。部屋に一緒に閉じ込められている女性が、代わっていることに気がついた。
それぞれ暴力を受けていて、いたるところに、あざや傷のある女性を見た。泣いたり騒いだりすると、殴られたり蹴られたりした。
あたしは表面的には従順を装っていたので、後ろに縛られていた腕にロープの痕がミミズ腫れになっていたのと、打たれた頬が痛かったぐらいで済んでいた。
あたしの強い思いは、絶対的な決心になった。
(生きてここから出てやろう)
やり残したことを数えて後悔するより、これから先にやり遂げることに対して希望を持ちたい。ここで殺されるようなことがあったら、死んでも死にきれない。
激しい頭痛で目が覚めた。時間の感覚が消えていた。ただわかったことがある。ここにいる男たちは、女性の体が目的ではないらしいということだった。
人体実験なのだろうか。