製造業は国際競争力を持つのか?
2023年のものづくり白書は、我が国の製造業の現状として、まだまだ国際競争力を保持していると指摘する。実際、そこに掲載されている2020年度の日本、米国、欧州、中国企業の主要製品の売上高を見ると、1兆円以上の売上を持つ製品が日本には 18個あり、そのうち自動車だけで54兆円もの売上がある。
また、世界シェア60%以上の品目を見ると、エレクトロニクス系や自動車の部品や素材を中心に220個と他国を圧倒して多い。日本の製造業は国際的にも強い競争力を維持しているといえる。
製造業の国際競争力を考えたときに気になるのが、製造業全体で見たときのデジタル武装の遅れである。1977年に3D CADが誕生して半世紀経ち、日本の製造業の6割以上が3D CADで設計する時代になった。

写真を拡大 図2 - 2 協力企業への設計指示の方法は何か?
一方、2020年のものづくり白書には、見落としてしまいそうなくらい小さい、しかし、重要なグラフがある。それは「協力企業への設計指示の方法は何ですか」という問いへの回答だ。
図2 -2を見ると3Dデータで渡すところが15・7%、2Dデータで渡すところが23・8%、図面で渡すところが54・3%だという。3Dと2Dを合わせて39・5%がデータで設計指示をしている。逆に考えると、残り6割もの企業がデータを渡していない。それどころか、もともと6割以上が3D CADで設計していたはずなのに、3Dデータで指示しているところはわずか15・7%にすぎない。
この事実は、設計のデジタル武装が進んだにもかかわらず、後工程では旧態依然とした方法で仕事をしていることを厳然と示している。