【前回記事を読む】「人間とAIも、結局、混ぜこぜになるんだろうな」「イイトコ取りって考えれば、いいんじゃない?」

第二章 すぐそばにある、知の分断

ネイビーがシュウトくん用のレモネードを拝借する。りんご酵母の日本酒が残っていたな。ちょっと合わせてみよう。

「ひょっとすると次に来る世界って、日本には、おあつらえ向きかもしれないよ」

おれたちは、漢字でも仏教でもファッションでも食い物でも、外から来るものをリスペクトして取り入れているように見えて、そのくせ、ごしゃごしゃに混ぜ合わせて、いつのまにか日本っぽいものにつくり変えてきたんじゃないかな。編集というほど、洗練されたものではないような気がする。

コロナ禍の最中に、ニュースを見て思ったんだ。あの非常時に、欧米をはじめとした自由世界の国々が、一気に政府主導の計画経済に転向していなかったかい? ふだんのりっぱなイデオロギーの張り合いって、なんなのだろう。かたくなに自由な市場経済なんて、あの場合はやってられなかったんだよ。パンデミックみたいな状況は、これからも起こるだろう。

「こうあるべきだ」とか「どっち?」って決めつけすぎると、これからどんどん、自分を追い込んで生きづらくなっていくんじゃないかな? そのとき、日本の習性は、ごちゃ混ぜが大好きだろ? おれは、地球の未来に、その一見いい加減な〈混ぜたい魂〉が、とても大切なエンジンになると思っている。

イノベーションって、日本語に訳すと〈新結合〉なんだぜ。

ネイビーが、首をこりこり回しながら話を続けた。

「それこそ、かき混ぜ役をAIがやればいいんじゃないか?」

「……なにをかき混ぜるんですか?」Keiさんが訊く。

「いや、その1on1。あそこの上司と部下は、最近あまり話していないなと探知したらさ、AIが声をかけるというか……1on1×AI」

「三者会談ね。三者って、けっこうコミュニケーションがうまくいくのよね」

「AIに優れた対話力があるんだったら、階層意識も世代分断も、うまいこと、こなすだろ?」

「そこまで頼りにしちゃって、いいんですかね?」

「思いつきだけどな」

ジョージは、なにかインスピレーションを得たようだ。

「あの、もしもですよ。AIがフェアに、プライバシーを保って対話を取り持てるとしたら」

AIこそ、実務や思考のパートナーになるだけじゃなくて、組織の世話役さん。ドライなエリートがなろうとしなかった、サーバントリーダー*1になれるかもしれない。