【前回記事を読む】「みなを同じように削れば、規格品になる」――宮大工の棟梁が見たのは“育たない人間”の未来

第四章 過去にひそむ未来

棟梁が大テーブルのメンバーを見回す。

「ねえ、みなさん。コンピューターは〈想う〉ことができるようになりますか?」

「想えない。考えるだけだと思う」「想うは、考える+感じる」「AIは考えていないよ」「人間は本当に想っている?」「人格がないと想えない」「想っていない人格も、いそう」「人格がなければ、AIと恋愛できないぜ」「YOさん、単なるパターンです」

「ここで聴く限り、当分は難しそうですな。コンピューターにできる仕事が、どんどんコストダウンしたら、コンピューターにできない、想い悩んでばっかりの私らの仕事は、どんどん価値が上がりますか。若い衆の時代に、職人魂はようやく陽の目を見るか。わははは」

私は古くさい人間の典型ですが、これから先は、人間があること・ないことを想像する能力こそ、唯一、希望にあふれる仕事になると思うんですよ。

シュウトくんが、消え入るようにつぶやく。

「どうして、小さいころに『職人さんになりたい』って思えなかったんだろう」

「あなたは充分、職人ですよ。分野は違いますけど。よかったら、その新しい賞花亭、ウチの若い衆にも話してみますか?」

「えっ…………」シュウトくん、今度はうれしくて息が止まる。

「これもなにかのご縁ですから」棟梁は、厨房のほうを見てつぶやいた。

「私らのほうで、仮想空間は作りませんけど。アイデアのありかたが、まったく違うのがね、ムチャをしているところが、伝統一辺倒には刺激になる。

それに……私は50年ほど仕事をしてきましたが、なにもないところに東西南北からつくり込んだことは、ありません。四神相応の地相から拵える仕事なんて、いままで考えたこともありませんでしたわ。YOくんも、興味ない?」

「ありがとうございます。おれ、なにができるかなぁ」YOさんは両手を頭の後ろに組んで考える。……脳裏にボワッと、新しい看板が光り輝いた。〈YO HOME バーチャル支店〉。

「あの、あたし、子ども向け科学雑誌の編集をしているんですけど。棟梁さんのお話、取材させてもらっていいですか?」アッちゃんも、棟梁のお話を子どもたちの目の輝きにしたいと思った。

シュウトくんは、無言で何度もこくこくと頷いている。