【前回記事を読む】60代が近づくほど怖くなる――走り回る仕事を続けるか迷った、その結末は……
第四章 過去にひそむ未来
【クマくんの、もうちょい検索メモ】
[①人間の本能]ソースティン・ヴェブレン(1857~1929年)
『ヴェブレン』宇沢弘文著
『ヴェブレンとその時代』稲上毅著
『資本主義と闘った男』佐々木実著 より引用と編集
■ヴェブレンが経済学者・社会学者として活動した時代は、アメリカがイギリスに追いつき追い越す、資本主義の意味が大きく揺れた時代だった。
■彼は、学術的に曖昧なものとされがちな、人間が持つ「無垢な好奇心」「製作者気質」などの本能に注目した。(「製作者気質」とは、人類の物質的福祉に直接貢献する本能、とされる)
■人間は、単に効用を最大化するよう、外部の刺激に受け身で反応するだけの存在(新古典派経済学の想定する「個人」)ではない。絶えず新しい展開を求めて夢をもち、その夢を実現しようとする、本源的な性向と歴史的に受け継いできた習慣をもった、一個の有機的存在である、と考えた。
■人間に普遍的に備わっている本能は、時代々々の環境変化・制度変化・思考習慣の変化によって、その都度規定されるが、時と共に累積的に変わっていくものと想定した。
ヴェブレンにとって、人間は欲望の効率的実現ばかりをもくろむ生物ではなく、より能動的に社会と連繋して、「無垢な好奇心」や「製作者気質」の本能を育む生物だった。
■しかし、近代の経済システムがそれを貧弱なものにした。企業の実体的な活動より、営利を求める要求が上回ってしまえば、そもそも産業を支えている「製作者気質」は、本来あるべき本能を歪め、社会全体ではなく金銭的投資家の富の獲得に合わせるよう、反人間的(没本能的)な活動に帰結してしまう。
*ヴェブレンはケインズと同様、過剰な営利を求めすぎる市場経済の台頭に警鐘を鳴らしたのではないか。
*ケインズもまた、経済を左右する要因として、本能に近い「アニマルスピリット」(合理的には説明できない不確定な心理)という言葉を言い遺している。