【前回記事を読む】これまで150年、ホワイトカラーという種族が繁栄したが、次の50年も同様であるとは想像できない…

第六章 ひとりひとりの、小さな旅立ち

クマくんは、会社初の兼業社員になった。

新しい〈職業〉を持ってきたのは、ジョージだ。彼のクライアントが新社屋に移転する際、ライブラリーを開設することになった。社員が〈知〉で交流する場づくりの一環だった。

通り一遍のビジネスハウツー本ばかりが並ぶような書架ではなく、多様な教養に接する蔵書をつくりたい。しかし、どんな知が発想を啓発するヒントとなるのか、範囲は広大だ。

小規模なスペースに図書館の十進分類法をそのまま持ち込んでも、集積の視点がぼやける。彼らは、従来のライブラリー常識とは異なる知の編集力を必要としていた。

ジョージがクマくんにポロリと話したら、彼はこともなげに分類表を送ってきた。

①「宇宙/地球」を想う ②「文明」を展望する

③「グローバリズム」の潮流 ④「日本」のとらえ方

⑤「生存/環境」と向き合う ⑥「社会/地域」を豊かにする

⑦「文化」「物語」のチカラ ⑧「からだ」と「こころ」

⑨「技術/産業」が導く未来 ⑩「経済」「地政」の潮目を読む

⑪「経営」「働き方」革新の芽 ⑫「学び」「創造性」をひろげる

また、蔵書を累積的に増やしていくには、司書さんとは別に、選書のディレクターが必要だった。ジョージはクライアントと相談し、クマくんに手伝ってもらえないかと打診した。

ところで、彼の勤める鉄道会社もまた、時代の激動するなか、働き方や学び方を試行錯誤している。クマくんに請われた仕事について、質のいい事例になると考えた会社は、兼業を認めた。

この件を最終判断した役員が、つぶやいた……ウチの会社にも、本棚、あっていいよな。

知の捕食者・クマくんは、自分の道を拓きはじめている。