――また、はじまった。面白がっていたら、もっと面白くなった。僕にとっての〈神の手〉は、好奇心なのか。
カウンターでは、リョウコさんがワイングラスを持って、腰を上げた。
「わたし、ちょっとあちらにお邪魔してくるわ。なんだか、新しい学びの匂いがする」
「あんたの鼻は、よう効く鼻やなぁ」
「そうそう、なんでも鼻を突っ込んでおくと、そのうち思いもしなかったことがはじまるの」
オッチャンはグラスの氷を指でつまみ、口に放り込んでボリボリ噛んでいる。
「またワイン飲もな、リョウコちゃん」「あいよ、セイちゃん。ありがとね」
ネイビーとオッチャン、三十年来の戦友が、ふたりになった。
「……そういえば能美、お前、旅に出ると聞いたんやけど」
「世耕のオンタイからだろう」ネイビーは、かつて同僚と共に世話になった、元顧客の名前をあげる。