【前回の記事を読む】VRで疑似タイムスリップ! 目を覚ますとそこは涙がでるほど懐かしい20年ぶりの教室だった。限られた時間でやるべきことは…
時空の溶解
「愛子、飯、どうすんの?」3人の女子の輪に愛子はいた。
「今日は、コンビニのパンだけど」
「天気もいいし、外で食べよう」
今さら二人を冷やかす人間もいない。二人は連れ立って教室を出た。
史上稀にみる恐怖がすぐそこに迫っている。しかし春の陽がうららかで緊張感は薄らぐばかりだった。
「ねぇシュウ、亜美との噂聞いたよ」渡り廊下を歩いているとき愛子が言った。
「何だよ、それ?」
「黒ちゃんが言いふらしてる」
愛子も中学で水谷亜美とは一緒だった。容姿において学年を二分する人気を誇った二人だから、少なからず意識はあっただろう。
「部活の関係で、用品店に行っただけだよ」
「ふーん」
ふくれた表情の愛子が可愛かった。小学生の頃は意識もしなかったが、中学、高校と成長していく彼女に何度もどぎまぎさせられた。色白の肌はなめらかで胸も大きい。長いまつ毛を携えた瞳が印象的で、厚い唇もよかった。
やがて芝生エリアに着き二人は腰を下ろした。愛子が早速パンをかじっている。工藤も弁当を広げたがちっとも食欲がわかなかった。
「どうしたの? 私のパンでよければ食べる?」
心配顔で愛子が問いかけてくる。首を振った工藤は無理に笑顔をつくってみせた。