植物

植物になりたいと思った

    

静かに あたたかな空気で

そばにいる誰かにそっと寄り添う

植物になりたいと思った

    

喋ることもなく 動くこともなく

音もなく 二酸化炭素を吸いこんで

自分の中で 濾過をする

人間が生みだした いろいろなものを取り除いて

酸素にして そっと地球に吐き出す

その尊い営みがなければ 世界はとっくに壊れている

     

樹齢200年といわれる 大きな樹木

根元に立つと そびえる大木の神秘的な力が わたしに伝わって

そっと深呼吸を繰り返した

わたしが吐き出すのは 相変わらず 二酸化炭素だけれど

植物は そんなわたしを 受け入れてくれるから

    

幹に 耳を押しあてて 植物の呼吸を感じ取る

生まれ変わったら 植物になりたいと思った

    

サンドイッチ

サンドイッチを作った

あの子が幸せになれるように 四つ葉のクローバーをはさんだ

気づかれないように こっそりはさんだ

いいことは 誰にも知られないところでするものなのよ

    

ピクニックに出かけた

バスケットにつめた サンドイッチの幸せが

わたしを守ってくれている気がした

   

待ち合わせの樹の下で あの子が待っていた

わたしに気がついて 笑みを浮かべる

空の太陽に負けないくらいの きらきらの笑顔

    

これからあの子に溶けてゆくクローバーが

あの子の笑顔をずっと守ってくれますように

それがわたしの ささやかな願い

小さくて 大きな 世界の願い

  

【前回の記事を読む】【詩】「炊き立てご飯 ふわふわご飯 白い湯気の向こうで つやつや笑うご飯 しゃもじで さくさく切る お母さんの両手」

 

【イチオシ記事】喧嘩を売った相手は、本物のヤンキーだった。それでも、メンツを保つために逃げ出すことなんてできない。そう思い前を見た瞬間...

【注目記事】父は一月のある寒い朝、酒を大量に飲んで漁具の鉛を腹に巻きつけ冷たい海に飛び込み自殺した…