パールは、またさびしそうな笑みを浮かべて言いました。

幼い見た目とは打って変わって大人びた仕草が、パールが本物の「エルフ」であることを物語っています。エルフは、人間とは比べものにならないほど長生きなのです。

「じゃあ、あなたは、初めの『春を呼ぶ少女』が生きていた頃から、ずっとこの森に?」

「うん、冬の神様と一緒に、ずっとね」

その途方もなく長い時間に、リリーはめまいがするような気がしました。

「さびしく……ないんですか?」

「あんまり。ここには、植物も、動物も、生き物がたくさんいるからね」

パールがちらりと木の上を見やると、二羽の小鳥が一緒に赤い手袋を運んできます。

「あっ、この前の……」

そのうちの一羽には、首の辺りに白い斑点がありました。数日前、雪原で出会った小鳥です。

リリーが手を差し伸べると、小鳥たちはその上に手袋を置きました。赤い毛糸で編まれたその手袋には、たしかに黄色の花の刺繍がされています。色も、大きさも、間違いなくあの女の子—メルのものです。

数日前に会ったその小鳥は、フルールの周りを楽しげに飛び回り、パールの頭の上に止まりました。

「こら。そこに乗るなって」

パールはきゅっと眉根を寄せますが、その声は不思議と怒っていません。その姿からは、森の生き物を心の底から愛していることが伝わってきました。

かわいらしい声で鳴く小鳥に、パールは「うん、うん」とうなずきました。何かを話しているのでしょうか。

     

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