「あの時が三歳くらいだとしたら、今は十八ってところかなあ」
エゴルは聞かれたことにだけ、手短に答えた。
「ほう、十五年前ってことだな。捨てられていた日のことは何かわかるかい」
ジョジョは革の上着の胸ポケットから手帳を取り出し、何か書きこんだ。
「はっきりしてる。大王の祭りの日だから、その年の夏至(げし)の日だ。よそからも人がきて賑やかだったのは覚えてるよ」
「はあん、親からはぐれた迷子かと思ったけど、誰も迎えにこなかったってわけか」
「いや、首に捨て子って書いた札をさげてたらしい。な?」
当時はまだ少年だったエゴルは、そのあたりの事情には疎(うと)い。店主に確かめると、彼は二度三度うなずいた。
「うえっ、そりゃきっつい話だなあ」
この男の周辺にはもっときつい話がいくらでもありそうなのに、ジョジョの善人っぽい驚きぶりが二人にはいささかおかしく感じられた。
「どんな服を着ていたとか、覚えてないか」
エゴルはもとより、店主もこれには首をかしげた。
「身につけていたものとか、なんでもいいからもうちょっとわからないかなあ」
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次回更新は11月22日(金)、21時の予定です。