【前回の記事を読む】「泣かせたでしょ!」教室がざわついたあの日――転校生との秘密を守るために、僕がついた嘘
第一章 コスモスの頃
四.約束
「悪かったね、小さくて」
「あ! 開き直ってる!」
「何とでも言っておくれ」
そのような自分の態度に愛想を尽かしたのか、何かを察したのか、それ以上、女子は何も言ってこなかった。
彼女と一番仲が良いと思われる女子が、去り際に「ちゃんと仲直りしたの?」と聞いてきたので「大丈夫だから」と答えた。
その女子は、彼女と一番仲が良いだけあって、クラスの女子の中では少しだけ浮いていた。浮いていたというと変な意味になってしまうが、〝良い意味で〟浮いていたという感じ。何処か、彼女と同じ雰囲気がする女子だった。落ち着いている……そのような感じ。
そうこうしているうちに、彼女がいつものように登校してきて、その騒動もいつの間にか落ち着いた。
日本中の学校でイジメの問題が多い中、そのように女子同士が異常に仲が良い。しかも「彼女を泣かせた」と男子に食ってかかるような光景は、一種、微笑ましい光景だったかもしれない。
あの公園で、彼女が転校してきた真実を聞いた日から、彼女との距離が近くなっていくのを感じていた。当然、日が経つにつれ、クラスの連中も男子・女子問わず、それは同じ感覚だったと思う。彼女自身も……。
ただ、何となくだが、自分だけが特別一番近い距離にいるように感じていた。
席が隣だから?
〝秘密〟を共有しているから?
自分の腕の中で泣いた彼女がいたから?
たぶん、それら全てがそう感じさせていたと思う。あの真実を知ってしまった日以来、僕は憧れとは違う意味で彼女のことを気にしていた。しかし、彼女は自分の腕の中で大泣きした後は、いつも通りに振る舞っていた。
それが故意なのか自然なものなのか、全くといってよいほどわからなかったが、友人たちと普段と変わりなく笑っている彼女の姿を見ることができていた。多少、複雑な思いがする中、そのような光景を目にすることができたことは、少なからず安心していたのは確かな感情だった。
ある日、自習になった時間があった。突然、隣で彼女が「クスクス」と笑い出した。
「なに?」
「だって、加納君、いっつもこっち見てるんだもん」
「え? そう?」
「うん。目が合うこと多くない?」
「そういえば……あ! 別に安藤さんを見てるわけじゃないから!」僕は、かなり焦って否定発言をしていた。
「そういう意味じゃなくて。こっちの方を見てるってこと」
「そう?」
「そうだよ。そしたら、何気に目だって合っちゃうじゃない」
「まぁ……そっか」
彼女は、更にクスクスと笑い出した。
「だったら癖だな、これ」
「癖?」
「安藤さんが来る前、その席、ずっと空いててさ。自然に窓の外見る癖がついてたかも」
「授業中も?」
「まぁね」「あらま」
また彼女は更に笑った。