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「ねえ、車で送ってよ」

朝のバスを走らせ、村に戻ったエゴルをキーラが待ち構えていた。

「ああ、いいよ」

これまではいくら車で送ってやると言っても爪をたてた猫のように毛嫌いしていたのに、向こうから言ってくるとはどういう風の吹き回しだろうか。エゴルはどうぞ、と後部のドアを開けた。

「助手席に乗ってもいい?」

「ああ、もちろん」

それを聞くと、キーラは人目をはばかるように自分でドアを開けてさっと車に乗りこんだ。フェンダーミラーをちらりと覗き、ハンチング帽をかぶり直したエゴルは、にんまりとした顔で運転席につく。するとキーラは早く車を出せと行き先も告げずに急かした。

「あんたのママに見つかるとややこしいからよ」

通りから離れると彼女はこっちから聞きもしないのに答えた。

―人をマザコンみたいに言うなよ。

誰に言われてもかちんとくる言葉だが、相手が十代の娘ならなおさらだ。エゴルはむっつりとした顔で前を向いたままたずねた。

「それで、どこまでいくんですか、お客さん」

「そうね、とりあえず村の外れまでいってくれる」