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店主が男にあきらめるように促した矢先、キーラが店に入ってきた。相変わらずの挑発的なミニスカートをはいて、おまけに今日は強気につりあがった細いサングラスまでかけている。くちゃくちゃとガムを噛みながら入ってきた娘に男はすぐに目をつけた。

「へえ、こりゃ驚いた。こんなおねえちゃんもいるのかよ!」

男はねっとりとした目でつま先から頭まで、彼女を舐めるように眺め回した。

不用意に入ってきたキーラは、店の入口で男を目にしたとたん、凍りついたように立ち止まった。見かけはふてぶてしくても、中身はまだ十代だ。

「あんたみたいなのがこんなへんぴな村にいちゃ退屈だろ? 街へ出なよ、街の方がおねえちゃんには断然面白いぜ」

男はにたにた笑いながら、品定めをするようないやらしい目つきだ。キーラは顔を伏せ、ジャケットの襟を引き寄せ立ちすくんでいたが、男がカウンターを離れて近づくようなそぶりを見せただけで、血相を変えて店から飛び出した。

「はん、とんだお嬢ちゃまだぜ」

キーラの耳に男の笑い声がまとわりついてきた。

店を飛び出したキーラは、さっきおりたばかりのエゴルのバスに突進し、開いたままの扉から大急ぎで中に逃げこんだ。

点検のためバスの後ろに回っていたエゴルは、物音に驚いて「誰だい?」と呼びかけるが、返事がない。仕方なく中に入り、恐る恐る通路を確認していくと、座席の下で小さく身を隠しているキーラがいた。

「何やってるんだい」

「いいから、あんたは、早く外に出て! 見つかったらお終(しま)いなのよ」

キーラは何に怯えているのか、顔を覆い隠して震えていた。