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カーシャは幸い、自分のことを怖い人だと思っている。純朴(じゅんぼく)な彼にはこれだけ言い聞かせておけば十分だろうとアニタは考えた。
「死んだらあの世までは持っていけないけれど、生きている間は私にだって必要だからね」
「おばあちゃん、死ぬの?」
カーシャはまた、あのいたわるような目をした。
「ああ、死ぬよ。生きているものは誰だっていつか死ぬんだよ」
アニタは彼女にしては精一杯のやさしい顔で答えた。
「私が死んでも、きっとこのお金はまだ残っていると思うから、その時はカーシャがここを開けるんだ、いいね。お前にはどうにもできないだろうから、そうだね……その時はサッコに教えておやり。あの子はかしこくて志の高い子だ。きっとうまくやってくれるだろう。いいねカーシャ、私が死んでからのことだよ」
アニタは指を立て、一つひとつ噛んでふくめるように言い聞かせると、彼はいつになく神妙な顔でうなずいた。