それから、竜興と千鶴は、日本という国の警部の制服を偽造したり、書類を捏造したりして、入念に準備をした。兄妹はそれぞれレイギッガア警察に見られたら、大騒ぎになるだろうと思った。
だが今は非常時なのだ。急いで五人のエンジニアに輸血をしなければならない。そのためのドナーをあの工事現場からさらってこなければならない。
「エリス……じゃない、千鶴。護身用に、レーザーフルーレを持っていきなさい」
「はい」
千鶴は厳重にロックがかかった金属製のロッカーの前に立った。
「我が名はエリス・千鶴・レイギッガア。我が手にレーザーフルーレを!」
すると閉まったままのロッカーの扉をすり抜けて、地球でいうところのフェンシングの三種類の剣の一つフルーレのグリップにそっくりなパーツが出てきて千鶴の手に入った。
「レーザーフルーレ、起動!」
その声に応じて、レーザー光線による刀身が現れた。「終了」と千鶴が言うと、刀身はグリップの中に戻った。
「よかった。声紋認識システムはちゃんと働いているわ」千鶴はそれをポシェットにしまい、
「わたくしは、お兄さまのおそばで、この惑星の景色をスケッチして、あとで銀河系航空宇宙局と銀河系史料編纂室へ送信しますわ。子どもの描いた絵でも、銀河連邦に属さない星に関する貴重なデータの一つになるでしょう? このたびのご配慮に対するささやかなお礼ですわ」とにっこりした。
【前回の記事を読む】気が付くと青白い光が目の前に現れた。気が付くと監視小屋の前には穏やかな顔の5つの死体が並べられていた