あなたがいたから
再再発
一回目の再発が九月、サイバーナイフ治療で、再発した腫瘍部分が消えたものの、退院して一度は元気になった彼も、今思うと十二月頃から次第に元気も無くなり、あまりもう生きられないという事を意識していた様に思う。
「何か伝える事があったら今のうちに伝えておいて」と言っても、「何も無いから」と言い、「もう自分は長く生きられないと思う。本当に今までありがとう、どんな言葉でも足りない位感謝しているよ」と言った。
その言葉に「そんな事言わないで」と伝えるのが、当時の私には精一杯だった。又「これからもっと病気が進み、家で看られなくなったら、どこか遠くの病院でも良いし、ホスピスのある病院でも入れてくれないか」と言った。
「分かった、貴方がそう思うならそうするから」と伝えた。自分のゆく末を思い、出てきた言葉なのだろう。「自分はこれからどうなってしまうのだろうか」と不安でいっぱいだったのだ。「亡くなってしまうのだろうか」と思っていた様に思える。
私が思う【死】と彼が思う【死】とは、恐怖も葛藤も違っていたと思う。うまく言葉が出てこない彼にとって、今どの様に思い、どの様に伝えたら良いのか、葛藤しているようであった。私にも言葉を話せない彼がどう今思っているのか、知りたくても知る事ができなかった。