返事の内容は予期していたようなものだったが、それよりもこの対応のよさに感激! この返事は後で実際に手術で執刀してくれた外科医との遣り取りで役に立つことになる。
私の癌は、盲腸の近く、上行結腸の部分に見つかったので、肛門から一番遠いところになる。手術では、盲腸も含め上行結腸を二十センチほど摘出するということだった。
友人にはあまり知らせなかったが、何人かにはメールを出した。
「誕生日は私の方が後輩ですが、切腹の数では先輩ですよ(大手術ではありませんが三回)。好奇心のかたまりのような方ですから、入院中またまた新しい発見や出会いがたくさんあることでしょう。名ばかりぺんふれんどより」というメールが来た。
中学から大学院の頃まで福岡と東京の間で、せっせと手紙を交換していた仲。長いつきあいだ。
もう一人、以前妻と二人で遊びに行った九州の離島から上京してきた友達とは、いいタイミングだったので、一緒に展覧会に行って帰りに食事をした。小学生の時の級友。
「あたしとダンスするんでしょう。元気で退院して来なきゃダメよ」と言われた。覚えていたか。
「お前も我々の仲間入りだな」と、小・中・高とずっと一緒だった学友。同級生でも、癌はもう老人の通過儀礼の感じだ。入院の前日にカレーパーティをしてくれた。
彼と奥さん、お嬢さん、それに我々二人の五人で食卓を囲んでおしゃべり。入院前日としては素晴らしい時間を過ごす。
ダンスの先生には電話やメールでなく、個人レッスンの時に「告白させてください」と切り出した。
これまで、何人かのインストラクターに教えてもらったが、私のダンス観を変えたのはこの人。その一年前のことだが、ブルースをしましょうと言い出した。
えっ? ブルースなんて、ふつうスタジオではあまり教えない。私も踊ったことがなかった。
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