【前回の記事を読む】大腸癌の手術後、一、二カ月のうちに髪の毛の大半が抜け、生えてくるのは白髪に。肌の色も変わり、白なまずに。

第三章 病気との付き合い方

睡眠時無呼吸症 (六十四歳)

睡眠時無呼吸症は高血圧症や狭心症・心筋梗塞といった循環器の病気など、合併症の原因になると聞くと、ことの重大さに驚く。しかし、それに劣らず、考えなければならないのは、睡眠が不完全なことによる生活全体の質の低下という問題だろう。では、一度診察してもらおうと気軽に出かけた。一泊する検査入院である。

脳波・心電図・呼吸・血液中酸素濃度・眼球運動・体位と、ありとあらゆるバイタルサインをモニターされた。後日、検査の結果を聞きに行く。「無呼吸が起こったのは、平均一時間当たり三十回。一回平均三十秒最高六十秒。

ということは、単純計算ですが一時間のうち十五分くらい呼吸をしていない時間があるということになりますね。立派な睡眠時無呼吸症です。正常は一時間当たり五回以下ですから」

気道閉塞の原因は大きく分けて二つあって、一つは気道自身が閉じてしまうケース、もう一つは呼吸中枢機能に欠陥があるケースだという。企業でいうと現場に問題があるのか、本社に問題があるかの違いだ。

無呼吸症候群の場合は、現場である気道の問題が圧倒的に多い。軽症の場合はマウスピースをして寝ることで、下あごをずらし気道の部分の空間を広げて閉じにくいようにできる。

私の場合はかなり重症なので、もう少し根本的に鼻マスクをして、圧力をかけた空気を送り込み、気道を閉じないようにする方法がいいと言われた。

シーパップ CPAP(Continuous Positive Airway Pressure 持続気道内陽圧療法)といわれる治療法で、かなり大仕掛けな器具がいる。鼻全体をマスクで覆い、圧力をかけた空気を送り出すポンプに太いホースでつながっている。酸素吸入器ほどは大きくないが、ポンプの部分が相当な大きさである。

不整脈 ― 心房細動 (五十二歳)

五十歳を過ぎてからだが、会社の定期検診で血圧が少し高いと言われた。ある時、血圧はふつうの値だが、脈拍が異常に低く出た。この血圧計壊れちゃったのかなと指を静脈に当てて脈を取り始めた。

そうすると、欠けるのである。「ト、ト、ト、○、ト、○」というように、○のところで跳んでしまう。道理で脈拍数が少なかったのだ。

さっそく、かかりつけの医者の所に行って心電図検査をしてもらう。そうすると、欠けたと思っていた部分は、実際は小さい振動がたくさん起こり、高さが低いので全体的に見ると脈がないように見える。どちらかというと頻脈である。心臓の専門医に診てもらう。

紹介してもらった専門医は、ハーバード医学部教授の白髪の循環器科の医師で、その町の病院に、自分の診療室を持っていた。見かけではその時もう六十代の後半だったと思う。

一時間以上かけて、診察だけでなく両親のこと生活習慣のことなど、いろいろなことを聞かれた。その医者が掛かり付けの医者に書いた報告書は、初診の時は、シングルスペースでタイプしたもの便箋三枚、二度目の診察の時は、二枚。

ここに、アメリカの医師の良心を見る。診察の結果や問診の内容について、実に丁寧に記述してある。そして、所見・診断・治療などが続く。