第三章 病気との付き合い方

人と同じで病気にも出会いがある。突然現れることも、また、中には出会った当時は自覚がなくて、後になって気付くことがあることも共通点かもしれない。

人の場合はそっと心の中に、病気の場合はそっと体の中に忍び寄る。そして、大腸癌は忍び込んだ後、突然表に現れたのであった。

大腸癌発見

七十一歳の時、定期検診の便潜血検査が陽性になった。近くの内視鏡検診のできる開業医で調べてもらう。手術のできる大きな病院で精密検査をしてもらった方がいいという話。その場で、大学病院の外科部長に電話をしてくれた。いろいろな検査を受ける。

精密検査の結果を話してくれるという日は、家内にも一緒に行ってもらった。伝聞より直接医者の口から聞いた方が妻も納得いくだろう。医者は開口一番「これは癌です」と言った。

立派なとかちゃんとしたとか修飾語がついていたかどうか定かではないが、とにかく全く疑いの余地はないという口調であった。上行結腸癌でリンパの方まで行っているようだから、手術をしないという選択肢はないと言われた。程度は後ではっきりわかったのだが、ステージⅢaだった。

自分でもしばらく考えたが、手術してもらうことに決めた。これだけはっきりした生検組織のグループや癌のステージが判明しているのだから、自分が医者だったらやはり手術を勧めるだろう。ただ、医者の患者への説明はもう少しレベルの高さが求められると感じた。

大学病院は治療方針が時刻表のように決まっている傾向があるといわれるが、手術後の治療についても私は納得するまで説明を求め、自分の人生哲学に忠実であろうと決心した。

何よりもまず、自分で状況をよく理解することだ。そこで、外科部長宛に手紙を書いて外科受付に置いてきた。二時間後病院から電話があった。先生が返事を書かれましたので、近くまで来られることがあったらいつでもとのこと。