【前回記事を読む】意識を取り戻したルリエ。いったいここはどこなのか――辺りを見回すと、エメラルドグリーンのものばかりで...

第一章 エメラルドグリーンの国

1

ルリエは眉根を寄せ、頭を抱え込んでしまった。看護師が、心配そうに見つめている。

「そうだ、思い出した。どうしよう。東京から、すずちゃんが来る日だわ。わたし、松本駅まで迎えに行かなくちゃ。すずちゃん、こっちは初めてだから、きっと迷子になっちゃう」

ルリエは、急いでベッドから起き上がろうとする。

「まだ無理しちゃだめよ」

ブロンドの看護師は、ルリエをベッドへ押し戻す。

「わたしの話をよく聞いて。あなたはね、どういう事情があったかは知らないけど、酸素マスクもつけずに危険地帯で倒れていたのよ。普通なら百パーセント命がなかったところを、パトロールの隊員に助けてもらったの。せっかくよくなってきたんだから、もっと自分の体を大切にしないといけないわ」

看護師は押さえつけていた腕の力をゆるめ、なだめるように言った。

「でも、すずちゃんが……。それに、おじいちゃんやおばあちゃんや、ポチやミーコが心配してる」

ルリエは、半べそをかいて訴える。

「わかったわ。わたしが、すずちゃんにあなたのことをよく話しておいてあげるから、安心して寝てなさい」

「ホント、すずちゃんはわたしの親友なの。今日のお昼ごろ、あずさ号で松本駅へ着くはずよ。迎えに行けなくて、ごめんなさいって言っておいて」

「ええ、よく言っておくわ。だから、そのジュースを早く飲みなさい」 

エメラルド色の制服を着た看護師は、笑みを浮かべて部屋を出ていった。けれど、ルリエにはわからないようにそっと入口をロックすると、急いで医局へ向かう。

「先生、意識は戻りましたが、あの子、やはり様子が変ですわ。ひどく興奮して、親友と会う約束があると口走っています。デスネヒトによる障害が出たのでしょうか。すずちゃんという仲よしの友だちや、おじいさん、おばあさん、それにポチやミーコとかいう人もいるらしいんですけど、本当かどうかわかりません。念のため、部屋をロックしておきました」

「親友に会う約束か。やはり、マヤタの組織の者と会うつもりだったのかもしれないな。すずはもちろん、じいさん、ばあさん、ポチやミーコというのも怪しいな。松本駅で会う手はずになっていたのかもしれん。とにかく、あの子から目を離さんように」

2

エメラルド色の制服を着た国家保安警察のベルガー中尉は、二人の部下と共に横柄な態度で病室へ入ってきた。白髪頭の医師とブロンドの看護師も付き添っている。ベルガーは冷たい視線をルリエに浴びせていたが、「お前の名前と年齢は?」と、半ば脅し口調で尋ねた。

「牧原ルリエ、十四歳」

「牧原ルリエ! 変わった名前だな。いったいどこの国の名前だ。国籍は?」

ベルガーは、疑わしそうにルリエを見すえる。

「日本です」

「日本だと? ウソを言うな」

「いいえ、ウソではありません」

「日本人なら国籍証を見せてみろ」

「国籍証?」

ルリエには、何のことかわからない。