イノシシさんは少し黙ってしまいましたが、暗い感じで柴犬さんのことを話し始めました。
「今日も夕方の見張りかい。この出来事をぎんちゃんとやらに話すのかい。困ったことだよ、この柴犬君には。どうしたら良いか、ぎんちゃんに話しておくれよ」
犬は、野良犬になると人間に捕獲されることをカラスさんも知っています。それを踏まえてイノシシさんに言います。
「ぎんちゃんは優しい人間だから、何とかしてくれると思うよ。明日の朝には何らかの話を持ってくるから、この辺りにいてね。それと、ぎんちゃんが言ってたけど、他の仲間になれるような生き物がいたら連れて来てだって。イノシシさんも、他の生き物たちと一緒に夕暮れの会に参加しないかい。結構面白いよ」
誘われてしまったイノシシさんは言います。
「まだ心の整理ができないな。だって、仲間が人間に殺されているんだ。そんな人間と仲良くしてたら、仲間から追放されるよ」カラスさんは言います。
「分かっているよ。ぎんちゃんは他の人間とは違うよ。本当に、共存を考えていてくれる。この里山も生き物を優先で保護しようとしている。相談に乗ってくれるよ」
「もう少し時間をおくれよ。ゆっくりと考えてみるから」
イノシシさんが、意外としんみりと大人しくなったので、カラスさんは話を終えたくなりました。
「分かった。また明日の朝には来るからね。待っててよ」
注釈1 烏合の衆 明鏡ことわざ成句使い方辞典 抜粋 規律も統一もなく寄り集まった群衆のこと。 烏の群れがてんでに集まったり散ったりすることから、群衆をあざけっていう。
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