四 波乱万丈の里山生活

その一 移住仲間たちとの夕食会

「さっき、この下の道で主人に捨てられました。ここで生きるしかないので、柿を食わせてください」

それを聞いた生き物は捲(まく)し立てます。

「お前は人間に嫌われた馬鹿犬か! 人間に謙(へりくだ)って尻尾ばかり振っていて、食い物をもらっていたんだろ。情けない奴だな、お前は!」

柴犬さんも、言われっぱなしも情けないので言います。

「おいらにそれを言われてもしょうがないです。生まれた時から親は人間なんですから。自分でも、これからどうやって生きればよいか分かりません。ただ、生き延びたいから食いたいのです」

むっとしながら、この大きな生き物は言いました。

「お前は俺が誰だか分かるか。都会の犬だから知らないだろう。イノシシというんだ。人間は、おいらの肉が美味いといって捕まえて食うんだよ。農作物を荒らすという理由で悪者にして。美味い肉だと笑いながら食うんだぞ! 気が狂っているぜ。殺される恐怖と怒りが分かるかい、犬よ」

柴犬さんは何も言えません。いきなり言われたことが何なのか想像できないので、怖くてただただ震えるだけです。

この揉(も)め事を木の上から見ていたカラスさんは、事情が呑(の)み込めました。昨夜、黒猫さんが言っていた大きな生き物とは、このイノシシさんのことのようです。確かにでかくて勢いがあって怖い存在です。

今、何かを言ってあげないと、この場は修羅場になりそうだと感じたカラスさんは、イノシシさんの矛(ほこ)を納めるように言いました。