【前回の記事を読む】「人間に突然近付けば、腰を抜かしたように驚くか、しなやかな私を若い女と勘違いして恐る恐る付いてくるわよ。」
四 波乱万丈の里山生活
その六 伝書バトさんの緊急飛来
「ところで、伝書バトさんの話はなんだい」
伝書バトさんが、とくとくと身の上話を始めます。
「おいらの話を聞いてくれるかい。伝書バトといって、遠いところから自分の家に戻る時間を競うレースによく出るんだけど、その練習で昨日の朝、ここからだいぶ離れた海沿いの町から放たれたんだよ。そしてしばらく畑の上や森の上を飛び、この近くまで戻る予定で飛んでいた。
毎回、長い距離を飛んでばかりで詰まらなくなったから、おいらは群れを離れてしまったのさ。そして休んでいたら、その土地のカラスさんが慌てて飛んで来て、おいらに今見て来た事件のことを教えてくれた。
この辺りには大きな養鶏場がある場所で、何時もは煩(うるさ)いくらいにニワトリさんの鳴き声がするらしい。だけど、一夜にして、ここのニワトリさんが全部いなくなったんだってさ。
何故だか、バタバタと死に出したから、全部のニワトリさんを殺してしまったらしい。そして、それをこれから全部土の中に埋めてしまうらしいと。気になって、ついカラスさんに案内してもらって見に行ってしまった。
その後は動揺し過ぎて、自分がどこを飛んだか分からず、一羽でここまで飛んできたのさ。もう怖くなって、主人の家にも戻りたくなくなった。一体あれは何なのか知りたくて、ぼーっと考えていたら夜になっちまった。そして、このカラスさんが声を掛けてくれたのさ。そして、ぎんちゃんに聞いてみようとなったのさ」
長い話を、伝書バトさんは一気に話し終えます。
ぎんちゃんは、聞いていてすぐに、その病気が何であるかを理解したので、動揺している伝書バトさんとカラスさんに言いました。
「それは、ウイルス感染の病気だね。鳥インフルエンザと言って、鳥に感染が拡大する病気だよ。養鶏場は、すごい数のニワトリさんが密集して飼われているだろ。一羽が病気になると、あっという間に感染が拡大するから、残酷だけど、全部を殺処分するしかないのだよ」