カラスさんが心配して聞きます。

「カラスや伝書バトさんにも感染するのかい」

ぎんちゃんが知っている情報を教えます。

「鳥インフルエンザというから、鳥の仲間には可能性はあるかもしれないね。だけど同じ密な環境で生きているわけではないから大丈夫でしょう」伝書バトさんが急に暗くなり、言います。

「おいらの棲み処は結構窮屈だよ。夜はそこで安心して寝ているけど、病気になり易いのかな」

ぎんちゃんは、安心させるように言います。

「一羽が何かの病気になれば、同じ病気になり易いのは確かだろうけど、一日中密な状況でもないだろうから、心配しなくても大丈夫だよ」

伝書バトさんは、ソワソワしてぎんちゃんの話を全く聞いていません。

「おいらはどうすればいいのかな。集団で生きて来たけど、野に放たれれば、優等生の伝書バトもただの鳥だよね。何の取り柄もないもの。人間に近付き過ぎたのかな」

カラスさんがぎんちゃんを見ながら、伝書バトさんを慰めます。

「そんなに気にしなくていいよ。この辺で生きていけばいいじゃないか。ぎんちゃんが見守ってくれるよ」

いろんなわけありの生き物が集まり始めて、ぎんちゃんは正直なところ困惑です。

「伝書バトさんは、その足環で管理されているから、見つかったら大変だよ。私が泥棒扱いされる。困ったね」

伝書バトさんが、懇願してぎんちゃんに言います。

「ぎんちゃん、この足環を切ってくれないかね」

「それはだめだよ。私が犯罪者になるから。自己選択したということで、自由になれば良いのではないですかね。私には指図(さしず)できないから」