【前回の記事を読む】「本当に人間は馬鹿だね。イノシシは怖がらずに殺す。そしてキツネは化かされるから怖いだって。実にくだらない。」
四 波乱万丈の里山生活
その五 キツネさんの御成り
それに気付いたカラスさんは大慌てです。
すぐに、ぎんちゃんに知らせようとしましたが、キツネさんらしき生き物の動きが、薄暗い里山をゆっくり下りて来るのですが、あまりにもしなやかで、月明かりに照らされて、まさに輝いているかのようです。
ぎんちゃんが言っていたように、本当に魔物のような神秘的な生き物に見えてきました。カラスさんはドキドキしてしまい、すっかりぎんちゃんに連絡するのを忘れています。
途中でイノシシさんとキツネさんが立ち止まります。そしてこちらを窺っているようです。
カラスさんは、はっと我に返り、イノシシさんとキツネさんに近付き、少し待っていてと伝えます。
ぎんちゃんとカラスさんが、しばらくしてキツネさんとイノシシさんに近付いて来ます。ぎんちゃんは少し緊張しています。イノシシさんも近くで話をするのは初めてですから、互いに身構えながらの挨拶です。
「ぎんじです。呼び出してすいませんね。イノシシさんにもキツネさんにも会いたかった。ご近所住まいですから、挨拶をしないといけないと思ってまして」
ぎんちゃんは、すごく丁寧な話し方になっています。イノシシさんは、少し憤慨してます。
「ぎんちゃんかい。なんか訳の分からない話し方だね。もっと直接的に、あんたの関心事を言っておくれよ。せっかくキツネさんを連れて来たのだから」
ぎんちゃんも、少々苦笑いして言います。
「すいませんね。人間社会は最初から直接的に質問はできないのだよ。少し話が馴染んでから本題に入る感じかな」
イノシシさんは、もうイライラしてます。それを見たカラスさんは、これはまずいと思い、一言助言を出します。
「イノシシさんには、ぎんちゃんの聞きたいことは全部話してあるから、もっと直接的にキツネさんに聞いてよ」
ぎんちゃんも笑います。キツネさんも薄笑いです。そして、ぎんちゃんがやっと本題を言います。