「キツネさん、こんばんは。キツネさんは人間社会では神の使いとされているんだ。近所にも稲荷神社があるだろ。鳥居を入ると石で作られたキツネさんの像がある。人間は昔からキツネさんを尊敬してたというか、ある種の畏怖を持っていたんだよ」

キツネさんが笑いながら、またかというように言います。

「人間が一方的にキツネのイメージを作るから面白くてね。我々は、夜な夜な、田んぼにおりてネズミやら蛇やら餌を捕るのよ。それを見ていた農夫たちが、感謝を込めて色々と祭り上げてくれる。迷惑と言えば迷惑だわね。名前だけ使われている気分よ。昼間に人前に出られないわ」

キツネさんの本音に、ぎんちゃんもイノシシさんもカラスさんも驚きます。キツネさんが続けます。
 
「稲穂が実っている満月の夜に、私を見ておくれよ。輝いて見えるようだよ。これを人間は神々(こうごう)しいと思ったり、狐火と恐れたりするらしい。面白くなっちゃうよ。だから、悪戯(いたずら)も簡単よ。夜に、人間に突然近付けば、腰を抜かしたように驚くか、しなやかな私を若い女と勘違いして恐る恐る付いてくるわよ。おかしくてしょうがないわ」

カラスさんは目が点になってます。イノシシさんもキツネさんの強(したた)かさに驚いています。ぎんちゃんは、喜んで頷いてばかりでしたが、思い付いたように言い出します。

「今度、夕暮れの会をやるから、イノシシさんとキツネさんも来てくださいよ。続きの話をもっとしたいので」

ぎんちゃんの言葉で、今夜はこれでおしまいにしました。ゆっくりとキツネさんとイノシシさんが里山に戻ります。カラスさんは、その姿をじっと見ています。

確かにキツネさんの動きはしなやかで魅了されます。満月の夜にこの姿を見たら、金色に輝いて見えるのだろうと、カラスさんはドキドキです。もうキツネさんにとり憑(つ)かれてしまったようです。