四 波乱万丈の里山生活

その三 言いたい放題の早朝の会

いつもと同じように、朝早くからぎんちゃんは畑仕事をしています。カラスさんは、昨日のイノシシさんと柴犬さんの事件を伝えるために、急いで飛んできました。家のひさしの部分に隠れるように棲んでいるので、夜中でも良かったのですが、お互いに、付かず離れずの関係は保ちたかったので、接点は少なくしています。

けれども、カラスさんは話したくてしょうがないので、朝一番で降り立ちます。

「ぎんちゃん、大変だ大変だ。柴犬さんが山に捨てられて、それをイノシシさんが威嚇(いかく)して喧嘩(けんか)になっちまったよ。イノシシさんは少し譲歩して、ぎんちゃんにどうするか聞いてくれと頼まれたよ。どうするんだい」

ぎんちゃんは、嫌な思い出が頭に浮かびました。野良犬になると捕獲され殺処分されるということが分かっています。だから、ぎんちゃんは即答します。「この家に連れて来るしかないね」 
カラスさんはすぐに言い返します。
 
「イノシシさんが困っているから、それを柴犬さんに伝えて良いのかい」 

ぎんちゃんの表情が一瞬暗くなりました。それに気付いたカラスさんが急(せ)かします。
 
「どうしたんだよ。急に黙ってしまって。なんか問題があるのかね」 

黒猫さんが冷たく言い出します。
 
 「犬は野良犬になると、狂犬病になるのだろ。人間に噛みつくから殺処分され易い。猫は、野良猫になっても人間に危害を加えはしないから生き延びられるけどね」

ぎんちゃんは、まだ、下を向いたり天を仰いだりして黙り込んでいます。考えているようですが、寂しそうでもあります。

それを察したか黒猫さんが、残酷なことを言い出します。

「ぎんちゃん、ひょっとしたら犬に何か悪いことをしていないかい」 

ぎんちゃんの顔が引き攣(つ)ってきました。とうとうぎんちゃんが言い出しました。