【前回の記事を読む】吹雪の中に15時間…寒さと飢えが襲う「地獄の苦しみ」の記録布引の下りにかかる頃、信州の山々の背後から、濃い太陽が昇った。吹雪をまともに食らいながら振り返ると、黒部の幽谷を隔てて、剣の異様なまでに重々しい姿が、今しもガスをかぶろうとしている。息つく間もない吹雪にあおられるようにして、七時四十分一気に南槍に登りきる。北西のかなたに、低く垂れこめた黒雲が左右に長く走っている。頭上で…
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