プロローグ

―死神

それは死を(つかさど)る存在。

死神に(とら)われた生ける者には確実な死が約束され、それ(ゆえ)、死神そのものが死を意味する。

死神に(とら)われた者、触れられた者には死が訪れ、弱い者であれば近づかれただけで、さらには姿を見ただけで冥府(めいふ)へと連れ去られる。

古来より畏怖(いふ)の対象として語られ、しかしその姿を見た者は皆無(かいむ)である。何故ならそれを見た者は生者としてこの世に存在しないから――。

そして現代。

死神はこの世に降臨し、姿を現した。

第一章 死神

容赦の無い日差しが、大地に降り注いでいた。

灼熱の大気が淀み、空気を歪め。

歪んだ大気が景色をゆらゆらと、水面(みなも)に映る風景の様に映し出している。

瓦礫(がれき)焦土(しょうど)と化した街。(ほこり)硝煙(しょうえん)の臭いが漂い、(わず)かに血の臭いがそこに混じっていた。