「真由美(まゆみ)」朧(おぼろ)な光の中で母が呼んでいる。「真由美、真由美」母はいつまでも、何度も私を呼び続ける。「真由美」声が少し尖ってきた。声はするのに姿が見えない、母はどこにいるんだろう。「真由美、早く起きなさい、もう六時五十五分よ」五十五分? そんな馬鹿な! 慌てて起き上がると、枕元の目覚まし時計の長針は五十五分をさしていて、短針は限りなく七に近かった。「なんで早く起こしてくれないのよ」…
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小説『氷上の蠟燭』【第6回】安達 信
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小説『鋲【文庫改訂版】』【第4回】菜津川 久
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