はじめに
私は、一九三六(昭和一一)年生まれ。今年(二〇二〇年)で八四歳になる。
太平洋戦争の戦災体験者の一人です。
年を追うごとに戦争を知らない若い世代が増え続け、戦争を知る人は減少の一途をたどっている。戦争という文字が風化しつつあるように思えてならない。
私が物心がつきかけたのは一九四三(昭和一八)年。国民学校(小学校のこと)一年生の頃だった。
幼くて分からなかったが、そのときすでに日本は、アメリカと戦争をしていた。
日本は、一九四一(昭和一六)年一二月にアメリカとイギリスに宣戦布告をし太平洋戦争が始まった。そして、一九四五(昭和二〇)年八月。アメリカによって広島、長崎に原子爆弾を投下され、三年八カ月にわたった太平洋戦争は、日本の無条件降伏で終結した。
しかし、戦争は終わったが、大変な食料難に直面しひもじい生活を強いられた。
戦争は、国民を極度に苦しめ、全てを破壊し悲惨な結果しか残らない。
戦争は二度と起こしてはならないし、させてもいけない、と強く訴えたい。
戦争によって、私の家族が、生活が、世の中が思ってもみなかった方向へ動いていった。
小学校も疎開(注一)のため学年ごとに転校し、勉強もおろそかとなり、最悪の小学生時代を送った。
戦争は、私の忘れることのできない強烈な想い出として残っている。