【前回の記事を読む】「母親を気に入ったのはなぜ?」と聞くと「母親の着ていた最新型の水着姿が、兎に角、眩しかった」と答えた父親
第二章
日本中を旅する不思議な少女
たかちゃんのお婆さん、父親の母親は、偏屈でおかしな人だった。
過去の若い時に花柳界にいた事で、兎に角、顔が広く、お茶やお花、お稽古事と、色々な知人が多く、果ては政治家などにも知り合いがいた。
旋盤工の夫、たかちゃんのお爺さんが亡くなった後、お婆さんは息子たちの恩給を貰いながら生活をしていたが、お婆さんは、息子の祀られている九段の神社に行き、そこで色々な人と会っていた。
息子たちの恩給では、お婆さんの生活は豊かでは無かったので、それでは、足りない事も有ろうと、人を介して国からの仕事を宛がわれていた。普段から、お婆さんは民間で薬剤を扱っていたので、国から頼まれれば、その仕事を請け負っていた。
お役人の関係者から、貴重な薬を手渡されて、その薬を持って、僻地の山奥だろうと離れ島だろうと、どこへでも薬を運んで出掛けて行く。
その危険な仕事のお供として、必ず孫娘のたかちゃんに声を掛けて連れて行った。
孫のたかちゃんには、
「なあ、たか、僻地の山奥や車が入れない所が有ってな、そこには薬が届かなくて困っている人たちがいて、この薬を運べば苦しんでいる人が助かって、人助けになるんだよ」
と、言い、
「薬で助かる人を、たかは、見捨てられないだろう」
「うん、この薬を届ければいいんだね!」
「そうだ! たか、お前が背負って運ぶんだ! 決して中のガラスの薬を壊したりしたらいけないよ、いいね!」
「うん、ばあちゃん、分かった!」