人助けの少女

たかちゃんも、小さなガラス瓶の薬を届ける事で、困っている人が助かると、言われれば、素直に従った。

たかちゃんは、小さな体で薬の入った木箱を背負い、お婆さんの後を歩いて付いて行く。

子供の自分が誰かのために役に立つ……。

この薬の箱を背負い運ぶ事で、それで人助けになるのならと、たかちゃんはお婆さんの言う通りに、どこまでも運んだ。

純真なたかちゃんは、狡いお婆さんに言い包められて、人一倍大きな薬箱を背負って付いて行った。

お婆さんは、体良く、高価な薬を狙う盗人から薬を守るため、用心棒代わりに、孫のたかちゃんを、いつも便利に連れて行った。

その道中、雨が降って滑りやすい、斜面の危険な状況の山道でも、人里離れた山岳地の山道を登り、丸太橋や、急流の川など歩いて渡る。

山道とはいっても、道などというほどの物では無く、人一人が通る草が生い茂った細い道で、寧ろ獣道に近い、そういう険しい山道を、孫娘と婆さんはひたすらに突き進む。

山道に慣れた大人の男でも、岩場の急所では、うっかり足を滑らせれば、命を落とすほどの危険な場所も有った。

大抵は落石や地滑りで、道路が寸断されていて、それを迂回しながら、山道を分け入って行く。崩落した崖を横切って、危険な奥地に踏み入って行くのだが、それは、本当に危険な仕事で、一歩間違えれば、薬を届けるどころか、自分の命すら危ない、そんな危険な場所などへ、お婆さんは平気な顔をして、運動神経の良い孫娘のたかちゃんを連れて行く。

たかちゃんは、今にも切れそうな吊り橋や、おんぼろのガタゴトトロッコに乗り、更には、道なき道を通って、僻地の山奥の遠くの集落まで、壊れやすいアンプル薬を、壊さない様に大事に届けていた。