第1章 最後のフロンティア

昭佐(しょうすけ)編―昭和の旅路

数日後、雨上がりの朝、昭佐は昭一郎に呼び出された。

「明日、荷をビルマに運ぶ。同行するように」

「承知しました」

「昭佐、戦争で一番大事な武器は何だと思う?」

「覚悟でしょうか」

「それも大事だが、先ずはそろばんだよ」

「そろばんですか?」

「あの銃や弾でどれだけの兵が何会戦やれるのか。その部隊が何日食えるかということだ」

昭佐は伯父の言葉に納得した。

翌朝、昭佐はトラックに乗り込んだ。車は山道を登り、最後は曲がりくねった川を突っ切って密林の中に入ったかと思うと、それがタイとビルマの国境だった。国境沿いに進んだ車は、気が付いたらビルマ側に入っていたのである。

突如として目の前に小さな部落が現れた。昭佐は、国境を越えたとわかったとき、自分が引き返せない道を歩き始めたのではないかと思った。