ドイツはパリ協定の目標を2050年までに実現する

再エネ導入を先導してきたドイツで、2016年7月、新たな動きがありました。

再生可能エネルギー法・2017年改正法案を可決して、FITによる買取価格(つまり再エネの助成金額)を政府が決めるのではなく、入札によって決定することにしたのです。入札の対象となるのは今までと同じように陸上風力、洋上風力、太陽光、バイオマスの4種類であり、ドイツ連邦系統庁(BNA)が毎年入札にかける発電量を決めます。

たとえば、BNAは太陽光発電については、2017年から19年にかけて、毎年60万キロワットの発電量の助成金額を入札によって決めるというふうになりました。最も低い買取価格(助成金額)をBNAに提出した発電事業者が、助成金を受けることができます。

つまり、再エネ発電事業者に対し、これまで以上に経済的な効率性が求められるようになりました。

メルケル政権が再生可能エネルギー法の助成制度に大きなメスを入れた理由は、電力消費者が負担する再エネ賦課金が年々増えていることにありました。

2016年に消費者が負担する賦課金の総額は、231億ユーロ(2兆6565億円)に達しました。その額は、過去10年間で約4倍に増えました。再エネの発電比率が33%に達した背景には、ドイツの電力消費者が毎年2兆円を超える金を注ぎ込んでいるという現実がありました。

1世帯あたりの再エネ賦課金の年間負担額は、2014年の時点で平均266ユーロ(3万590円)に達していました。しかし、最近の世論調査によりますと、回答者の約79%が脱原子力に賛成しており、回答者の92%が再エネの拡大を前向きに評価しています。

そして、再生可能エネルギー法には、2025年までに再エネの比率を40~45%、35年までに55~60%、2050年までに80%にするという数値目標が明記されています。つまりドイツは、2050年に「温室効果ガスの排出量を事実上ゼロにする」ことを目標にしています。