世界もグリッドパリティに達した
日本のソーラー産業が失速した後の状況を述べます。日本に代わってソーラー産業の世界一になったドイツでも、間もなく、ドイツのQセルズが中国メーカーの挑戦を受けて、Qセルズの市場シェアは低下しました。世界のソーラー産業の重心は、中国に移りました。
オーストラリア・シドニーの大学で太陽電池の研究をした施正栄は、2001年に中国の地方政府から600万ドルを調達して、サンテックパワーという会社(いわゆるベンチャー企業でした)を起業しました。施正栄は「再生可能エネルギーでもっとも重要なことは、コストを下げることだ」と徹底的に製造コストを下げ続けました。わずか4年後にサンテックパワーはニューヨークの証券取引所で株の新規公開を行いました。2010年の売上高は30億ドルを超えました。
その後、世界の太陽光の発電量に占める中国の比率は2010年の2%から2018年に32%まで急上昇しました。世界で新設される設備の4割は中国製になっています。ソーラー産業は、ジンコソーラーなど中国勢が世界上位を独占しています。日本市場も2013年は国内製品が7割でしたが、2019年には中国など海外製品が6割を占めました。中国は巨大な内需を背景に量産効果が出て価格競争力をさらに強めていっています。
逆に太陽光発電が軌道に乗り、習近平国家主席は2020年9月に二酸化炭素の「2060年ゼロ」を表明しましたので、さらに太陽光発電が加速するとみられています。
2020年9月、内モンゴル自治区オルドス市の砂漠地帯に建設されたダラト太陽光発電所は広さ67万平方キロメートルと山手線の内側に匹敵し、原発2基分の200万キロワットの発電能力を備えていて、コストは1キロワット時で4円強と日本の太陽光発電の3分の1を下回るまでになっています。この4円というコストに注目すべきです。
このように太陽光発電は規模の拡大と技術革新(後述します研究開発で発電効率をアップさせること、つまり、現在10%のものを20%、30%へと上げていくのです)の両面から攻めていけば、基本的には、電力が「ただ」と思えるほどになるのです。かつてと比較すると現在の情報は「ただ」のようなものです。太陽光発電は、これからです。日本では太陽光発電で後れをとったと思う必要はまったくありません。