パリ協定で地球温暖化は防止できるか

ご存知のように二〇一五年に歴史的なパリ協定が締結され、世界の気温上昇を二度未満、できれば一・五度未満に抑制することが約束されました。

その後、二〇一八年一〇月にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「一・五度特別報告書」が公表され、二度未満の目標では不安があるので、より厳しい一・五度未満の目標が求められています。

しかし、現在までに締約国が申告している目標を合計すると二度未満の目標にも遠く及んでいないのです。これでは京都議定書の時と同じで、「会議は踊る、されど温暖化防止は進まず」になってしまいそうです。

まず、ここ三〇年間の地球温暖化対策の経緯を振り返ってみましょう。

私たちが、地球温暖化について初めて注目するようになったのは、一九八八年八月、アメリカ上院エネルギー委員会の公聴会において、米航空宇宙局(NASA)所属のJ・ハンセン博士が地球温暖化の可能性について証言したときからでした。

それまでは、一九七三年の第一次石油危機、一九七九年の第二次石油危機以来、私たちの問題意識は、百年ぐらい先の二一世紀後半に化石エネルギーが枯渇してエネルギーシステムの大変革に迫られるだろうということでした。それが地球温暖化の発見で早めなければならなくなりました。

一九九二年のリオでの地球サミット

一九九二年六月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された地球サミットで国連気候変動枠組条約と生物多様性条約が締結されました。

この国連気候変動枠組条約で、先進国は温室効果ガス(二酸化炭素、メタンなど)の排出量を二〇〇〇年までに一九九〇年の水準に戻すことを約束しました。

一九九五年の第一回気候変動枠組条約締約国会議(COP1)のIPCCの第二次評価報告書は、「証拠を比較検討した結果、識別可能な人為的影響が全地球気候に表れていることが示唆される」と宣言しました。

また、現在の路線のままだと地球全体の気温は二一〇〇年までに二度上昇するという推定を行いました。